「食事療法が必要→はい、できました」というのは実行不可能に等しい
食事療法を一人で実行することはとても孤独です。
食事を制限するというストレスを感じる以前に、何をどれだけ食べて良いのか悪いのか、食事療法を一人で考えること自体がストレスです。
患者は栄養学の専門家でもなく、食品成分表などあまり見たこともないからです。
診察室で検査結果を見せられて、制限する食品について指導を受けます。
そして、そのまま診察が終わり部屋を出て病院内で会計に向かいました。
もうその時から強烈な孤独の中にいました。
細かい栄養指導もなく、不安やストレスへの支援相談もなく、一人で食事療法という制限の中に放り出された気分でした。
目的地も分からず、一人でなんの知識もなく、いきなり食生活の制限という世界に入れ、という指導だけが記憶の中に残される。
食べてはいけない、食べるのを避ける食品項目だけは指導されます。
しかし何をどうやってどれくらい食べたら良いのか、細かいことは何もわかりません。
食べたい欲望に対する耐性を持っておらず、ストレスに対する対処方法も知りません。
病院の会計に行く頃には、ちょうとお腹が空いてくる時間になっていました。
何を食べたら良いのだろう。
お腹がこんなに空いているのに、何をどれだけ食べたら良いのかわからない。
おにぎり・・・ああ、糖質も減らせと言われたっけ。・・・どれくらい食べられるんだろう。
トランス脂肪酸を避けろと言われたっけ・・・ああ、食パンもほとんど食べられないだろうな。
専属の管理栄養士を雇えるわけでもないので、自分で考えなければならない。
アプリでも探すか?本でも探すか?ネットで検索するか?
一人で食事療法・・・今お腹が空いているのに、今何を食べたら良いのかもわからない。
わからないこと自体がストレスになっていました。
食事療法はマイルールでも実行できたら勝ち
診察を終えて病院から出ると、自分の日常に戻ります。
食事療法をいう指導だけが記憶に残っています。
しかし、誰もフォローしてくれないし、教えてくれないし、支えてもくれません。
本を読んでネット検索してアプリを探してみて、結局どうなったかというと「自分なりのルールを決める」しかありませんでした。
食事療法は実行できてなんぼ、です。
つまり実行できなければ、どんなに立派な方法を組み立てても無駄です。
自分勝手でも良いから実行できたらOK、と考えました。
なぜなら、日常生活でだれも支援してくれないし教えてくれないのだから。マイルールを作って勝手にやるしかないのです。
そしてここで大事なことは、マイルールを作る上で治療上の原則的なことは守るということです。
例えば糖質を減らすとか、脂質を減らすとか(これらは人によります)、トランス脂肪酸を避けるとか、治療の基本を知った上でマイルールを作らなければなりません。
そして、本などに載っている食事療法をそのまま全部をやろうとはしませんでした。
根性がないので、もしやろうとしたらすぐに挫折したと思います。
脂質異常症の本を見ると、食事療法のところで食べる目安量が載っていたりします。
ご飯はお茶碗にこれだけの量、お肉の量はこれだけ、野菜の量はこれだけ、おやつの量や飲み物の量はこれだけ。
何回読んでも、できない!これだけしか食べられないの?!としか思えませんでした。
自分にとっては、見本のように書いてある食品の目安量は減点法にしか見えませんでした。
あれもこれも食べられない、というふうにしか見えませんでした。
患者は栄養学の専門家でも医学の専門家でもありません。
自分は物欲と食欲の煩悩の塊です。
見本のような完璧な食事療法なんてできない。
診察で指導されただけで、フォローもなく今までの生活習慣を完璧に変えるなんて無理・・・。
そこで一点制限主義の食事療法をすることにしました。
糖質制限をするときは、糖質量だけを気にして減らす。本などに載っているようなタンパク質の量の制限などはしません。
脂質制限をするときは、脂質量だけを気にして減らす。糖質量は制限しません。
この一点制限主義だけでも結構大変です。
本などに載っている食事のように、お米はこれだけ、タンパク質はこれだけ・・・とあれこれ全部に手を付けると逃げ場がありません。
糖質を我慢しているのだから、他は好きにさせてくれ。
脂質を我慢しているのだから、他は好きにさせてくれ。
一点制限主義は、他に逃げ道を作る方法でした。
一項目だけを制限を頑張る代わりに、他は制限しない。
自分は根性がないし、甘党の砂糖中毒だし、毎回食事療法の見本のような献立を考えることもできません。
食事療法の見本のような食事ができないから食事療法を諦めてしまう・・・これだけは避けなければなりません。
30%とか50%とかでも実行したほうが勝ち。
一項目だけを制限しただけでも、不摂生な以前の食生活より改善するのです。
一点制限主義の食事療法を行った結果
例えば甘党の人に、お菓子をもう止めなさい、菓子パンなどのパンを止めなさい、という指導は健康上正しいのだと思います。
しかし、もうお菓子の味を知っている人にとっては完全にやめることはとても難しい。
食べたら生命の危険にすぐにさらされるのであればやめるかもしれませんが、すぐに影響が見えない場合はとても難しい。
完全にやめるということは、逃げ道ありません。
(本当は逃げ道があったらいけないのですが)
減らしたらいいと言われても、気がつけば一袋食べてしまっています。
いっぱい食べたいのです。
一度に全部できないために、一点制限主義の食事療法を始めたわけですが、初めて見ると逃げ道があることに後から気が付きました。
糖質制限の一点主義ならば、低糖質のものならば何でも食べてよいのです。
脂質制限の一点主義ならば、低脂質のものであれば何でも食べてよいのです。
例えば甘いものが好きな人でも、
糖質制限ならば、低糖質のお菓子が食べられる。
脂質制限ならば、低脂質のお菓子が食べられる。
逃げ道があるから、制限している部分が続けられる。
このことを始めてから気が付きました。
逃げ道があることは、もう食べられなくなるという絶望から逃れることができます。
甘いものを止めてしまうことが100%としたら、一点制限主義は30%か50%かもしれません。
それでも一部だけでも制限できているので、以前の食生活よりずっと食事改善ができています。
そうした一点制限主義の食事制限を行った結果、何が変わったかというと「偏った味覚が改善」したことです。
ダイエットや食事療法が最初の目的だったのですが、結果的には偏って過食していたものがバランス良くなったのです。
つまり、甘いものばかり食べたいたのが、甘すぎるものがとても甘く感じるようになってたくさん食べなくなった。
脂っこいものがしつこく感じて、たくさん食べなくなった。(結果的に摂取カロリーも減りました。)
ダイエットや食事療法のため始めた食事制限は、最初制限すると強烈な欲望(食べたい欲求)が出てきます。
のたうち回りたくなる苦しさがありました。
しかし頑張って一定期間食事制限を行うと、その食事の味に慣れてくるのです。
そうすると、苦しさが減ってきます。
最初は強烈な我慢をして制限していたが、我慢があまり要らなくなっていきました。
最初の頃のような極限の我慢状態がずっと続いていたとしたら、ダイエットや食事制限を続けてはいけなかったと思います。
何度かの峠を超えると、結構なだらかな平原が見えてくる・・・そんな感じがしました。
糖質制限は一定期間きちんと続けられればダイエットに有効ですが、空腹感などかなり負担が大きいので長期継続はお勧めしません。制限解除後にリバウンドしやすそうだなという感じがしました。
脂質制限は味覚が慣れると割と続けやすい方法だと感じていました。ダイエットには緩やかに効果がありましたし、リバンウンドしにくい感じがしました。
自分がケーキを止められる日が来るなんて思いませんでした。
チョコレートを食べなくても平気です。
菓子パンを見ても、今ではしつこそうだな~と眺められるようになりました。
ちょっと甘いものが食べたい時は「中毒性が低そうなもの」も食べます。
しかし、過食しなくなりました。
ただし、気をつけたいことがあります。
中毒性が高い(食べ始めると欲望に襲われやすいもの)と感じる食品です。
高糖質、高脂質のお菓子は中毒性が高そうな気がする
偏って食べていたものを制限し始めてから、襲ってくる欲望の強さの違いを感じることがありました。
食べたくて仕方がなくなるものと、少し食べたらそれで満足するものが合ったのです。
低脂質のお菓子や低糖質のお菓子を探していると、結果的にトランス脂肪酸の摂取を減量できる事ができました。
低糖質のお菓子をこだわって販売しているところは、合成甘味料やトランス脂肪酸をカットしたものを作っていたりします。しかし、こういったものは手に入れにくく値段も高かったりしました。
そこで脂質制限中に疲れて甘いものを食べたくなったとき和菓子を食べてみました。
低脂質のお菓子は基本的に和菓子類が多いので、脂質がほとんどありません。
なぜか、そういったお菓子は食べすぎる中毒性が少ない気がしました。
クッキーやチョコレート、ポテトチップなどのジャンクフード、それらを食べ始めると気がつけば一袋食べ切っていました。
途中で止めることができず食べ続けてしまうのです。
それが低糖質や低脂質のお菓子を食べたときは、ある程度でやめることができました。
砂糖には依存性があると言われています。
これは自分の体感でしかありませんが、同じ甘いものなのに止められるものと延々と食べてしまうものがある。
特に中毒性が高いと思われる(途中でやめられない)と感じるものは、小麦系統とチョコレートです。そしてジャンクなものほど止めにくい。
低糖質の食事をしていると甘みに敏感になるので、甘すぎるものを食べすぎると胸焼けしてくるので止めてしまいます。
低脂質の食事をしていると油ものが胸焼けするので、コテコテした甘いものをたくさん食べられなくなります。
低糖質や低脂質の食事療法を行って、舌があっさり気味になったのかもしれません。
しかし、それだけでもない気がします。
小麦とチョコレートの魔力はかなり強烈な気がします。空腹でなくてもむさぼるように食べてしまっていました。
満腹でもケーキは別腹でした。
それと比べて、焼き芋は(低脂質)食べすぎることがありません。(満腹になるせいもある。)
ゼリー(低脂質)も団子(これも低脂質)際限なく食べ続けることもありませんでした。
一番危険だなと体感的に感じたものは、小麦(グルテン)を使ったふわふわのお菓子、油(脂)いっぱいのお菓子です。
また、チョコレートはカカオ(テオブロミン)+脂質いっぱいといったタブルコンボです。止められるはずがありません。
グルテン、カカオ、高脂質、濃い味、精製された甘さ、こういったものは食べたときに強烈に欲求に対して刺激される気がしました。
自分は一点制限主義という偏った食事療法しかできませんでしたが、食事療法を通じてなんとなくこういったことを感じるようになりました。
今は低脂質の食生活を続けていますが、慣れると今度は脂っぽいものがしんどくなります。
そうすると脂ぎったお菓子を食べなくなるので、糖質を制限していなくても甘さはあるのにあっさりしたものしか食べなくなります。
あっさりしたものはあまり吸引力(中毒性)が感じないので、食べすぎない、ということができます。
結果的に摂取カロリーも減ります。
本当は甘いものを完全にやめてしまうほうが良いのでしょうが、自分が食生活改善を続けていくために逃げ道をまだ残しています。
東京に行ったとき品川駅を歩くと、左右にふわふわでトロットロで甘い香りのする美しいお菓子がいっぱい売っています。
食事制限を始めた頃の自分だったら、誘惑にかられて財布を持って寄っていったでしょう。
それが、今はきれいだな~おじゃれだな~と見ながら、素通りできるようになっていました。
コテコテのお菓子を食べまくっていた自分がこう変わるとは思いませんでした。
しかし、トロットロのケーキを食べたら、良質のカカオ風味いっぱいのチョコレートを食べたら、きっとその中毒性を美味しいと思うようになる気がします。そして、そこからの離脱の苦しさも知っています。
自分にあった方法を探そうよ
人は知ったものから逃れるのは苦難です。
ストレスが溜まっている時は中毒性への耐性が減っているので、なかなか離脱ができません。
疲れているとき脳が糖質を欲してくるけれど、過剰に取りすぎて気がつけば糖質過多・・・。
何度やめようと思って挫折してきたことか。
一点制限主義をやってみて今度はなんとか続けられました。
「制限したこと以外は好きにしても良い」といった少し逃げ道を作ったおかげで、その中毒性の中に引き込まれなくて済んだ気がします。
自分の性格や嗜好を考えて、続けられる方法を見つけることが成功の秘訣なのではないでしょうか。
100%の食事療法ができなくても、継続することが成功だと思っています。
糖質と脂質の過剰摂取が肥満の元なのに、「糖質+脂質」の組み合わせはなぜ美味しく感じて中毒性が高いのでしょう。
だからこそ、糖質と脂質のどちらかを減らそうと。